人生の終わりに追い込まれた危うい青年が
ホスピス病院で人々の最後の願いを聞いてあげるうちに自分の人生を取り戻していくヒーリングドラマ____
出典:KBS
作品情報
原題 당신이 소원을 말하면(あなたが願いを言えば)
2022.8.12~9.29
KBS
演出・脚本
演出:キム・ヨンワン『謗法~運命を変える方法~』
脚本:チョ・リョンス
キャスト
チ・チャンウク / ユン・ギョレ役
『奇皇后』『ヒーラー』『あやしいパートナー』『僕を溶かしてくれ』『都会の男女の恋愛法』『アンナマスマナラ』『最悪の悪』『サムダルリへようこそ』
ソン・ドンイル / カン・テシク役
『応答性せよシリーズ』『花郎』『刑務所のルールブック』『シーシュポス: The Myth』
チェ・スヨン / ソ・ヨンジュ役
『元カレは天才詐欺師 〜38師機動隊〜』『Runonそれでも僕らは走り続ける』『だから俺はアンチと結婚した』『ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です』
ウォン・ジアン / ヤン・ヒギョン / キル・ヘヨン / ユ・スンウン
あらすじ
父の暴力から逃れるために駆け込んだ養護施設で育ったギョレ(チ・チャンウク)は、養護施設を出てからも少年院、刑務所と厳しい人生を送っている。そんなギョレが大切にしている犬の“息子”がある日余命宣告を受ける。”息子”が死んでしまう前に一度海を見に行こうとするギョレだが、そこである事故に巻き込まれてしまう。事故のせいで社会奉仕命令を受けたギョレはホスピス病院でボランティアをすることに。気乗りしないながらも足を踏み入れたその病院でギョレは、人々の最後の願いを聞いてあげる活動を通して、新しい人生で出会うことになる。
感想
人生の終わりに追い込まれた危うい青年が、ホスピス病院で人々の最後の願いを聞いてあげるうちに自分の人生を取り戻していくヒーリングドラマ。
最初が良かっただけに、途中ドロドロのサスペンスになって脚本が迷走した感じはありますが、道に迷いながらも終点は間違えずにゴールしてくれて良かった…持ちこたえた…という気持ちで最終話を見終えました。
好き度🍙★★★☆☆
※ふんわりとしたネタバレのある感想です。
人生追い詰められたギョレが行きついた先は
厳しい人生をただ耐えて生きてきた青年ユン・ギョレ(演:チ・チャンウク)
刑務所を出所したユン・ギョレは、逮捕される前に預けた仔犬を迎えにいくため知り合いの獣医をたずねる。
ギョレにあるのは、自分に執着する血のつながらない妹、そして道で拾った仔犬の「息子」だけだった___
出典:KBS
病に侵され余命短い"息子"と一緒に最後に海を見に行こうとした先で追突事故をおこし、社会奉仕(労務罰)のためにむかったホスピス病院で人生を変える出会いをする。
「耐えるだけの人生を生きる男」
「ホスピス」
「最後の願い」
ぱっと見ただけで泣くしかないドラマやん…?
末期患者たちの最後の願いに泣き、主人公ギョレの心の変化に泣き、徐々に明らかになるギョレの悲惨な人生に泣き。涙腺爆砕ドラマ。
出典:KBS
ギョレが出会ったのはホスピスで患者の最後の願いを叶える活動をしている「チームジニー」の人々。(ジーニーとは、アラジンの魔法のランプに登場する魔人の名前。持ち主の願いを叶えてくれる。)
成り行きで活動の手伝いをすることになったギョレですが、ホスピスで働くすべての人がチームジニーの活動を快く思っているわけではありません。
あえて「最後」だと意識させるのが本当に患者本人のためになるのか?
安静が必要な体に無理をさせることは果たして正しいことなのか?
「人生の最期をどんな形で迎えることが最良なのか」という答えの出ない問題と向き合いながら、患者が人生でやり残した最後の願いを叶える活動をするチームジニー。
比較的冷血漢なので(?)もしこのドラマが最後の願いを叶えることを完全に「良いお話」として描いていたらたぶん引いてたなと思います。人生の最期をどうすごすべきかという問いに答えはないので、その点をちゃんと描いてくれたのは冷血漢にはありがたかったです。
個人的には活動資金はどこから出てるのかが気になってしまいました。
「金もらってるやってるのか」と聞いたユンギョレと私たぶん同じ部類…人件費だけ無償で材料費や交通費は依頼主負担なのかな…?とか…ま…気になっちゃって…
一緒にごはんを食べたら
今作の見どころのひとつが、野良犬のように牙をむき出しにしていたギョレが心を開いていくさま。
はじめ、ユン・ギョレを演じるにはチ・チャンウクは上品すぎる気がしていました。でも「ただし、実は心根が優しい」が見えてくるとチャンウクがすごくいい感じになってくる。笑
ギョレが朝まで柿をいっぱいつくる時、言葉で患者さんを傷つけた後悔と申し訳なさを不器用に表現するギョレに涙腺がぶっ壊れました。
韓国ドラマの食事シーンがとても好きなのですが、今作でも食事シーンが荒れたギョレの心を溶かす場面のひとつとして描かれていて
出典:KBS
はじめは一緒に食卓につくことさえ拒否していた野良犬ギョレが、ごはんを一緒に食べる人がいる、ごはんを食べたか気にかけてくれる人がいる、どんなごはんが好き?と聞いてくれる人がいる、その温かさに心を溶かしていく。
「ごはん何が好き?」
「そんなのない。生きるために食べるだけ。」
「じゃあ一緒にギョレのベスト3一緒に探そう」
ギョレのためにカレーライスを作ってくれるおばさんの愛情は、ほぼ母親の愛情と同じ。まるで偏食の5歳児に「美味しく食べられるメニューを一緒に探そうね」という母親なのよ。
出典:KBS
誰かが自分を気にかけてくれる。誰かが自分を必要としてくれる。誰かの役に立てることが嬉しい。
それが生きる活力になり、まるで死んだ魚のようだったギョレの瞳に光が戻ってくる。
出典:KBS
ラブも芽生えそう…♡
今作、看護師のソ・ヨンジュを演じたスヨンの演技がとっても良かったです!
ギョレの理解者であり、ホスピス病院を明るく照らす光のような存在。
最期の時間を扱った重いストーリーのなか、明るく前向きでサバサバした性格のヨンジュが私たち視聴者にとっても救いでした。
そしてチェスヨンがめちゃくちゃかわいい!
出典:KBS
これまで見たスヨンの演じた役の中でいちばん本人のイメージに合っている気がします。
出典:KBS
患者さんを守るためにと謎に筋トレをしまくるヨンジュさん。
確かに患者さんの介添えって体力勝負みたいなとこあるけど…(スヨンが筋トレする姿が妙にしっくりくる)
生きたい人と死にたい人
患者の最期の願いを聞きながら自分の居場所を見つけていくギョレにほっこりした気持ちで見ていた前半。
出典:KBS
意外に笑いどころもあって、ヨンジュとも良い仲になり(表現古)ホスピスで信頼する仲間とすごすのだなと思いはじめた頃に、あらわれます。
「私と一緒に死んで」とすがってくる女が。
出典:KBS
怖いのよ…
やっと見つけた居場所を壊されそうで…
出典:KBS
どうか…帰ってください…
膝をついて頼んでも残酷な人生はギョレを逃がしてくれない。
脚本がうまいなと思ったのは、これまでギョレがどんな人生を送ってきて何から逃げているのか、ふんわりとしか見せず、突然ホスピスに女があらわれたところ。
せっかく手に入れかけていた希望が突然消えてしまいそうなギョレの不安と、この女は一体ギョレのなんなのかというヨンジュの不安を、視聴者も一緒に味わえるという地獄。
ここからギョレの人生が紐解かれていくのだけども、もうまじ地獄絵図。
未視聴の方は突然崖から落とされる気持ちになるのでほんと気をつけて!
生きたくても生きれないホスピスの患者と、死ぬことしか考えていない女、その対比をもっと深く描いていくれたらより意味のあるドラマになったのかなと思いましたが、それはそれで相当な地獄ですね…
死にたがる女を演じたウォン・ジアンさん。
演技力がすごかった。突き抜けたヤバさと精神を病んでる不安定さ、痛々しさ…「D.P.脱走兵追跡官」3話で演じた脱走兵の彼女役の印象も強く残っていますが、この手の役柄はハマることまちがいなし。
ネタバレになりますが、最後には笑います。
出典:KBS
みんなみんな…幸せになっておくれ…
ここからはネガティブな感想になってしまいますが
中盤の4階の部屋の秘密にまつわるくだりはいらなかったと思います…
快活で竹を割ったような性格のヨンジュがそんなことに協力するのも役に合っていないし、他のみんなが協力するのもちょっと力技すぎる。
ってか、カン班長とギョレの過去のつながり全般的にいらなかったかな。
出典:KBS
人生に大きな後悔を抱えたカン班長が、厳しい人生を歩んできた青年に出会って人の優しさ温かさを伝える。そんなシンプルな話の方が心に残る作品になったと思います。
そして、チームジニーのメンバーが活動に参加する理由やきっかけがもっと知りたかったかな。そこをもっと深堀りして「人生の最期の願いを叶えること」がより強く意味付けされたら良かったとも思います。特に、女子高生の彼女がホスピスで奉仕活動するに至った理由はなんだったんだろう…
そして、これは完全なネタバレですが
最後にカン班長から時計を受け取り、ジニーの班長の座を受け継いだギョレ。
病院でジニーの活動を続けていくわけですが、最後の願いを叶える活動は無償で行われているはずなので、基本ギョレは無職ということです…か…?
どうやって食べていくんだろう…?
病院で職を得たのかな?
またはカン班長が作った財団の職員として働いているということなの…?トランクに隠してたバックにはいった大金は奪われちゃったままよね?
と結局はギョレ経済的な将来の心配をしてしまいました。
感想が俗物的ですみません。
こんな私ですが、今度ともよろしくお願いいたします。