Netflixオリジナルのチョン・ヘイン最新作
軍務を離脱し脱走した脱走兵を捕まえる軍人の物語
期待を越える良作でNetflixオリジナルの強さをあらためて実感しました!!!
文句なしの★5
今回はネタバレなしで書いています。
出典:Netflix
作品情報
原題 D.P개의날(D.P犬の日)
Netflixオリジナル
2021.8.27配信開始
演出・脚本
演出:ハン・ジュンヒ
『コインロッカーの女』『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』
脚本:キム・ボトン(原作作家)共同執筆
キャスト
チョン・ヘイン / アン・ジュノ役
『あなたが眠っている間に』『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』『ある春の夜に』『刑務所のルールブック』
ク・ギョファン / ハン・ホヨル役
『キングダム:アシンの物語』『新感染半島 ファイナルステージ』
キム・ソンギュン / パク・ボムグ役
『応答せよ1994』『熱血司祭』
ソン・ソック / イム・ジソブ役
『最高の離婚』『サバイバー60日間の大統領』『マザー』『恋愛体質~30歳になれば大丈夫』
あらすじと感想をネタバレなしで
50分×6話の短編ドラマですが、まるで長編映画のような作品。
演出やカメラワーク、演者さんたちの演技もまるで映画のようで、特に終盤の緊迫したシーンでは映画を観ているような気持ちになりました。
Netflixは「人間レッスン」など、地上波やケーブルテレビで作れない社会派の問題作を制作していますが、このドラマも韓国社会に問題を問いかける制作側の意思を感じるドラマのひとつ。
イントロのタイトルで主演チョン・ヘインがこちらにむける視線には「傍観者になるな」という強いメッセージを感じます。(ドキュメンタリータッチの映像で、兵役の問題と国防の意義の両方感じさせる素晴らしいイントロ!)
私は日本人で韓国の兵役制度に対して発言すべきではない立場、傍観者でいるべき立場の人間なので、以下はあくまでドラマの感想です。
好き度🍙★★★★★
※ネタバレはないよう気をつけていますが、1話までのあらすじにふれています。
物語の始まりは、チョン・ヘイン演じる主人公アン・ジュノがバイトで行ったピザの配達先で「お釣りをくすねた」と難癖をつけられるところから始まります。
インターホンを押して「僕は嘘はついていません」と主張。
ピザ屋に戻ると苦情を受けた店主から理不尽に解雇をつげられ、給料も踏み倒されそうになるが、配達用バイクに乗って逃走。バイクを売り払って未払いの給料にあてることを店主に告げます。
そのお金を実家に送金し、妹にメールで父親に酒を飲ませないように念を押すのですが、この最初の数分で、アン・ジュノの性格、対応能力、家庭環境までわかる台本素晴らしい!
そして家族や恋人に見送られる人たちのなか、アン・ジュノは誰にも見送られず入隊します。
はじまった厳しい訓練生活、そして憲兵に配属されたジュノを待っていたのは、先輩による無意味なしごき、いじめ嫌がらせでした。
出典:Netflix
ジュノの忍耐も我慢の限界に近づいたころ、ジュノは洞察力の高さとボクシングの経験を買われ、軍務を離脱し脱走した脱走兵を捕まえる通称D.P.に任命されます。
ここでジュノのバディとして登場するのがク・ギョファン…ではなくコ・ギョンピョ!(カメオ出演)
入隊してから決められた服を着て決められた場所で過ごしてきたジュノは、私服を着て外へ出ていくことに複雑な感情をもちながらも脱走兵と連れ戻す任務のために先輩D.P.と外の世界へ。
しかしこのコ・ギョンピョ、女の子たちと酒を飲んで脱走兵を探す気なんてまったくない。「上の命令は絶対」の軍隊で、逆らうことはできないジュノは酒を飲まされ無意味な時間をすごしてしまうのだが、そのうちに事件は思わぬ方向にすすんで____というのが1話のおもなあらすじです。
コ・ギョンピョは、特権階級の兵役逃れ問題と「上の命令は絶対」が引き起こした結果を残して退場。ジュノの相棒ハン・ホヨル上等兵(ク・ギョファン)は2話からの登場とになります。
上等兵ハン・ホヨル、この重くてシリアスな作品をみている私たちにとっては救いになる人物。
縦の関係を重要視しないホヨルはジュノに対してもフランクだけど、上官に対してもフランク。上官やジュノとのコミカルなやり取りで笑かしてくれるのですが、その緩急が絶妙で。予告動画を見てない方はぜひ見てみてほしい!
出典:Netflix
ク・ギョファンさんとは初めてお会いしましたがとても自然で優しいんだけど癖のある演技をする方で、チョン・ヘインとのケミストリーもとっても良い。
容疑者を追う刑事バディーものと似ているようで違うのは、D.P.たちが追うのは犯人ではなくて自分と同じ軍人で仲間であるという点。
捕まえる側であるジュノとホヨルが脱走兵たちにむけるまなざし、一歩間違えれば自分たちもその立場にあるかもしれないという脱走兵たちへの共感や「入隊しなければ脱走することもなかった」というやるせなさが切なく、深くて。
「脱走兵を捕まえることは、彼らを助けて守ること」
特に最後の脱走兵を絶対に助けなければいけないと追いかける姿には、涙をとめることができませんでした。(安っぽい言葉ですがほかに言葉がみつからない)
出典:Netflix
内容の重さがヘビー級なうえに、演出やカメラワークがドラマのそれというよりも映画的で生々しさがあり、息をとめながら見てしまう緊迫感があります。
軍隊内部でのいじめが、虐待の連鎖のように上から下へ広がってより悪質になっていく様、温厚だった人間を変えていく様は恐ろしく、気分が滅入っているときに見るのは要注意。
キャスティングもはまっていて、メインの俳優さんたちはもちろん、悪役から同じ部隊の隊員たちまで演技が素晴らしかったです。
キム・ソンギュンは応答せよのイメージしかなかったけど渋い。
ソン・ソックはあいかわらず飄々としている役が合う。
ク・ギョファンは上ですでに述べたとおり。
そして主演のチョン・ヘイン、演技が上手なのは知っていましたが今作でさらに実力を示したといった感じ。個人的には「あなたが眠っている間に」のあそこのシーンのチョン・ヘインの演技が神がかっていて最高だと思っていたのですが、それを越えてきたと言ってよいと思います。
そして、これはミーハー視点ですが、チョン・ヘインはロマンスでなはない作品のほうが好き、かつ長髪より短髪が好きなので、今回の役はかなり好き(これまでは刑務所のルールブックのユ大尉がいちばん好きでした。こちらは同じ軍人でも職業軍人)
さらにミーハーレベルをあげて言うと、つばのまるまったキャップが似合いすぎるのとボクシングヘインがかっこよすぎるのが大変良くて困りました。
Netflix制作ドラマなので、他ではできないような暴力的な描写も多く、煙草吸いまくり、ファ〇ク的な汚い言葉を3秒に1回誰かが言ってるようなドラマでしたが、キレたジュノがその放送禁止ワードを口に出した時には、チョン・ヘインが…!となりました。
私の友人(韓ドラ興味なし)が「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」を見てチョン・ヘインのことを「つるつる大豆くん」と名付けたのですが、つるつる大豆くんと放送禁止ワードのギャップがすごくて心に残った次第(蛇足)
話をドラマに戻します。
(ふんわりしたネタバレになるかも知れません。不安な方は読み飛ばしてください)
ドラマのエンディングでのシーン。
脱走兵の友人がとった行動が理解できませんでした。
フィクションではあるものの、演出脚本ともにリアリティーのある仕上がりだったのにあまりに突然すぎるような感じがして。
また、骨壺に書かれている没年が2014年というのも、意図が分からずひっかかっていたのですが。
このツイートをきっかけに、2014年に実際に起きた事件のことを知って、ひっかかっていた部分が解消されてとても納得がいったので共有します。
という組織の大変革があった年だと言えます。 14年4月7日 ユン一等兵暴行死亡事件、14年6月17日 イム兵長銃乱射事件の2つの事件で、軍の名誉は失墜し、国民から猛非難を浴びることになりました。 「我慢すればユン一等兵、我慢できなければイム兵長」という言葉まで韓国の若者の間で登場しました。
— ソン (@song1736) 2021年8月29日
この事件は韓国人であれば当然知っていいるでしょうし、作品のメッセージをより強く伝えるために実際にあった事件を思い出させるエンディングにしたということに、あらためてこのドラマの制作意図を強く感じました。イントロに朴槿恵大統領の映像を使った理由も理解できて、よりイントロの完成度に驚きました。
と同時に、とても良いドラマなので感想を書きたいけれど、日本人の私が軽々しく書いていいものなのか悩みましたが、あくまでドラマの感想(チョン・ヘイン愛多め)ということで、このレビューを書くに至りました。
未視聴のNetflix民はぜひみてほしい良作です!
ついでに、この作品でチョン・ヘインを発見してしまった人が甘々なラブストーリーのヘインを見て甘辛のギャップで沼にじゃぼんとダイブしてくれるのを期待!
※2023年8月 追記
シーズン2の感想書きました。
kyonbokkun-onigiri.com