出会い系アプリ【サムバディ】を介して起こった殺人事件
興味から殺人犯に接触したアプリ開発者が男に振りまわされていく
作品情報
原題 썸바디(サムバディ)
2022.11.18~
Netflixオリジナル作品
演出・脚本
演出:チョン・ジウ『ウンギョ 青い蜜』『ユ・ヨルの音楽アルバム』
脚本:チョン・ジウ、ハン・ジワン『私だけに見える探偵』『殺人者のショッピングリスト』
キャスト
キム・ヨングァン / ソン・ユノ役
『ピノキオ』『僕らの青春白書』『君の結婚式』『ウチに住む男』『初対面だけど愛してます』『こんにちは? 私だよ!』
カン・ヘリム / キム・ソム役
キム・スヨン / ヨン・ギウン役
キム・ヨンジ / イム・ムグォン役
感想
ちょっと…というか、正直かなり驚いた作品です。
夏フェスに行ったつもりがクラシックコンサートだったくらいの意外性。
大衆受けのしない、好き嫌いのわかれる作品だと思います。
約50分 × 全8話。
好き度🍙★★★☆☆
※ネタバレなし
Netflixのオリジナル作品は挑戦的な作品が多いですが、中でも群を抜いて特殊な作品だと思います。というかむしろ、Netflixじゃないとこんなの作れない。
意味を完全に理解するのがむずかしいアートのような作品。
絶対に人気作にはなり得ないし、再生回数や視聴率のような、いわゆる興行的に成功するのが難しい作品を、それとわかったうえで生み出して世に送り出している。
Netflixさんの作品に対する姿勢がすばらしいし、Netflixの矜持のようなものを感じました。
「サムバディ」は社会的マイノリティを描いた作品です。
アスペルガー症候群、身体障碍者、性的少数者など、社会的マイノリティの折り合いのつかない感情を描いた作品。
犯人を追う過程を楽しむ作品ではなく、他者との疎通への渇望や欲望を描いた人間の内面の物語です。
感情の表現の独特さに、うんうんと唸りながら見ました。
バイオリンやピアノの美しい旋律とゲームサウンドのような音楽のミスマッチが怪しく耳に残り、心をざわつかせます。
後味の悪さはグロさや残酷さのせいではなく、後に残るやるせなさのせいだと思います。
サイコパスの連続快楽殺人犯を演じたキム・ヨングァン。
これまで出演してきた作品とはまったく異なる作風の作品、ちがう雰囲気の役柄ながら、最高級の気持ち悪さで作品をひっぱっています。
キム・ヨングァン大好きなんだけど、しばらくはこの顔見たくなくなった。
そして、キム・ソム役を演じたカン・ヘリムさんの演技が素晴らしかった。
ソムの性格が多少デフォルトされたアスペルガー像のように感じましたが、とらえどころのない不安定なソムの内面がカン・ヘリムの演技でとても良く表現されていて。
直接的な性表現のある作品なので出演にすごく勇気が必要だったと思うのですが、『ウンギョ 青い蜜』でキム・ゴウンを見出したチョン・ジウ監督なので、今後のカン・ヘリムさんの活躍を期待したいところです。
最後に。
このレビューに考察的なことを書きたいと思いながらも、考えがまとまらなかったので、なるほどなと思ったこの方の天才考察を貼っておきます。
※ネタバレです。
考察を求めてる方はぜひツリー全部見てほしい。凡人には理解できなかった部分が、この2ツイートを読んで全部クリアになった気がします。
#サムバディ ネタバレ考察
— ミーガン🐴 (@spadewin) 2022年12月6日
飴は会社で「今の気分」としてBOXに入れる仕組みがあったように、”感情の象徴”のような使われ方をしてたのかな。再開発地区にギウンが取り残されたときユノが放り投げた飴が、ユノとしては”楽しい”感情、受け取ったギウンとしては”怒りと悲しみ”の感情で相対していた。(続く
#サムバディ 全8話完走
— ミーガン🐴 (@spadewin) 2022年12月4日
各方面のマイノリティしか出てこないし、人にはオススメしないけど、私は好きでした。クリミナルマインドのBAUになった気持ちで、考察が捗る。
以下ネタバレ⚠️
ラスト8話で、ソムの自慰を見て、自分無しでも成立しちゃう寂しさからソムとのより強い繋がりを求めたユノ。(続く pic.twitter.com/lEqiye8P3h
わかる人だけに伝わればいいとでもいうような振り切った作品だったので、これを理解して言葉にして表現できる人ってほんとに天才だと思うなど。
しかし、天才じゃなくても、すべては理解できなくても、受け取り方はそれぞれなので、Netflixの矜持をたくさんの人に受け取ってもらいたいなと思います。