景福宮に行きたい

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삼각김밥은 경복궁에 가고싶다

韓国ドラマ「LOST 人間失格」感想 リュ・ジュンヨルの色気

作家になる夢をあきらめてゴーストライターになったものの、今は日雇い家政婦として働き、結局何もできないまま道を失った女と

役割代行サービスをしながら金が愛だと思っている、結局何もできそうにない自分自身を恐れる男

深い闇の中で出会った男女のヒューマンドラマ


出典:JTBC

作品情報

原題 인간실격(人間失格)
2021.9.4〜10.24
JTBC
全16話

演出・脚本

演出:ホ・ジノ『八月のクリスマス』『四月の雪』パク・ホンス
脚本:キム・ジヘ

キャスト

チョン・ドヨン / イ・ブジョン役
『プラハの恋人』『グッドワイフ』『イルタ・スキャンダル』『男と女』『君の誕生日』『キル・ボクスン』

リュ・ジュンヨル / イ・ガンジェ役
『応答せよ1988(恋のスケッチ)』『運勢ロマンス』『タクシー運転手 』『毒戦 BELIEVER』

パク・ビョンウン / ジョンス(ブジョンの夫)役
この恋ははじめてだから』『オーマイ!ベイビー』『イブ』

キム・ヒョジン / ギョンウン(ジョンスの元恋人)役
プライバシー戦争』『無人島のディーバ』

あらすじ

出版社を辞めて日雇いの家政婦になり、結局、何者にもなれないまま道に迷った主婦のブジョン(チョン・ドヨン)。役割代行を仕事にしてお金が愛の証しだと考え、結局、何者にもなれそうにないことにおびえる若者のガンジェ(リュ・ジュンヨル)。決して交わることのない世界に生きていた2人はある日、吸い寄せられるように出会う。痛みと苦悩で傷ついた心に芽生えた温かな感情。だが、あることがきっかけで2人の純粋な想いは引き裂かれていく…。

huluより


\「LOST人間失格] huluにて独占配信中 /

hulu




感想

「人間失格」
タイトルからして重すぎるこのドラマ

見終わってしばらくたった今もなお余韻が消えません…

人生を見失い深い闇の中で出会った男女が、藁にすがるかのように互いの存在を求めるヒューマンドラマ。

「マイディアミスター私のおじさん」「私の解放日誌」のような作品が好きな方におすすめの作品です。

好き度🍙★★★★★
★4か5かで迷って5にしました。余韻がすごいんだもん…

※この感想にはネタバレが含まれています。視聴済みの方むけの感想です。

出典:JTBC

リュ・ジュンヨルの色気

個人の好みの問題ですが、わたくし理解力の乏しさゆえ、文学的すぎる作品が苦手です。

なのに「人間失格」には例外的に夢中になってしまい、まさかの2周目視聴。
その世界観から今なお抜け出せずにおります。


あのねぇ

リュ・ジュンヨルの色気が半端ないのよ

このドラマの感想のはじめにコレを言ってしまうのは、我ながら浅いとは思う。しかし言わずにはいられない。

リュ・ジュンヨルの色気が半端ない。

髪型とかファッションとか、ひとめで絶対に昼職じゃないですよねっていうその見た目はもちろんなんだけど、イ・ガンジェという人間のオーラっていうんですかね。


出典:JTBC
(あ、これは私がいちばん好きなガンジェの写真です)

自分への諦めと諦められない自分の間にある揺れ動き、世間に喰われまいとガチガチに固めた心の壁、母の愛さえお金で受けろうとする不安定さ。

そういうのが全部合わさった内面から出てくる陰の色気。
その色気に私はすっかりやられてしまい、気づいたら終始ガンジェ目線で視聴しておりました。

「会いたいお父さん、この世に同じように生まれて、俺は何者にもなれない気がします」というイケボイスの独白も、色気がすごすぎて内容が頭に入ってこない。


出典:JTBC

ガンジェの色気、この感じどこかで見たことがあるな…と考えていて気づいたのですが、ガンジェの色気は「愛していると言ってくれ」の豊川悦司さんに近いものがありますね。あれは中学生だった若き日の私が初めて触れた男の色気でありました。(蛇足)

はじめ、ブジョンとガンジェの関係がいわゆる男女の仲になっていくのか、それともマイディアミスターのドンフンとジアンのように性別を超越した関係になっていくのか、そこが見えないうちは、ガンジェに無駄な色気を感じてしまう自分が邪念まみれの女に思えて居心地の悪さを感じました。

私は悪くない。
リュ・ジュンヨルが悪い。


出典:JTBC

ブジョンとガンジェがふたりでいるシーンはいつもなんとも言えない緊張感があって

なんならすれ違うだけで、メールをやり取りしてるだけで、こちらまで息を殺して見てしまうような緊張感。


出典:JTBC

もっとあけすけな言葉を使って言うと、全シーンがエロい。

エレベータの中で「背中のブラウスのボタンがひとつ開いていたから」と言うだけで、どんな濃厚なラブシーンよりもエロス。手さえにぎってないけどエロス。

服を脱がないエロスは本物のエロスって誰かが言ってたけど、ほんとそれ。

単に既婚者との許されない関係だからではなく、ふたりを結びつけているものが身近に迫った死であり、共有した秘密であるというのがすごく大きくて。

誰にも見せたくない本当の自分をガンジェに見せるブジョンの不安と期待、こんな自分でも少しは人間らしく生きられるのではないかというガンジェの期待と不安。

それぞれの期待と不安が入り混じってたまらない緊張感。

溺れゆく者が藁にすがるように互いの存在に期待しながらも、近づくことをためらって離れていくふたり…プラトニックって強いわ…


出典:JTBC

エロスの最高潮は、天文台のテントの中のシーンということで視聴済みの方は異論ないかと思います。

あれは18禁ならぬ28禁であった…

南楊州市の派出所までブジョンの身元を引受けに行ったガンジェ。
初めてお互いのことについて深く話し、かぼちゃの馬車のように消えてしまうかもしれないふたりの空間のなかで、肉体的に限界まで近づくんですが。限界まで近づくんですが!!!!

あれをドラマでやって良いの?というエロさだった…

なにを聞かれてもいつも「わからない」ばかりのブジョンが、「顔に触ってもいいですか?」と自分から感情を見せてきたのには非常に動揺しました。ガンジェ目線で見ているので。


出典:JTBC

どうでもいいことですが、テントってけっこう重いし、建てるのも面倒なんですよね。どこの誰かも知らない人に貸してくれて、マットとランタンまで貸してくれて、写真まで撮って送ってくれる親切すぎる彼女、最高にグッジョブ。さらにはプラネタリウムで天体ショーがあるよって教えてくれて彼女はまじで最高にグッジョブ大賞でした。


翌朝になり山を降りるふたりの表情が優しくなって、これまでの危ういエロスの塊ではなくて、自然体のふたりになってるのがすごく良くて


出典:JTBC

ガンジェがふつうの青年に見えるの。年上の好きな女性の隣を歩くただのふつうの青年。友達といるときのような口調も、ブジョンの肩に寄りかかって眠る無防備さも。

だからこそ、ブジョンがソウルに帰ると言った時のガンジェの泣き笑いみたいな顔が切ない。かぼちゃの馬車が消えてしまうのを怖がっていたのはブジョンの方なのに、傷ついたのはガンジェの方で。


出典:JTBC

傷ついたはずなのに、自分の感情を確信したような清々しい笑顔で海に向かうガンジェ。一晩で別人のような顔つきになったガンジェ。


でもやっぱり色気は消えてなかった

陰から陽へ少し配分が増えたくらいであいかわらずの色気…


出典:JTBC
(あ、ちなみにこちらは髪短いバージョンで一番好きなガンジェさん)

南楊州市の帰りのバス停で、もう一度連絡先をスマホに登録するよと伝えるかわりに、なんて登録したらいいか尋ねたガンジェ。きっとスマホに登録された「イ・ブジョン」という名前をそのあと何度も何度も見ていたんでしょうね。

ソウルで再会したガンジェが、初めてブジョンの名前を呼んだ時の感動というか、夢なのか幻想なのか不確かだった存在が現実のものになった高揚感というか。


出典:JTBC

ずっと息を殺してふたりを見ていた私は、ここでようやく息が吸えた気がしました。

しかし、あれですね。
ようやくふたりはキスしたというのに、キスよりもその後に言った「イ・ブジョンさん」の一言のほうがずっと引きずってるし、キスした場面よりもキスしなかったテントの中のほうがずっとセクシーで心に残ってます。じつに不思議なことに。

そしてこの表情ですよ( ◜ᴗ◝ )


出典:JTBC

星空の下という非現実ではなく、ソウルという現実で、特に理由がなくても会えたふたり。

このあと更にハードな現実が待ってはいるけれども。

ガンジェはきっとこれから先もブジョンのこと名前で呼ぶ気がします。それでちょっとふざけたり甘えた時にヌナ〜とか言うんだと思う(願望)


出典:JTBC

何者にもなれなかった自分に絶望していたふたり。
生きる資格、人間である資格はあるのだろうかと自問していたふたりが、不倫という道徳的に問題の関係になることはその思いとは逆行しているわけで。

でも、互いを理解し合える唯一の存在がそこにしかなかったんだな…


ブジョンの「何者にもなれなかった」という感覚は、平凡な人生を生きる人なら誰でも多少の差はあれど身に覚えがあるもの。
歳を重ねるにつれて折り合いをつけていく感情だと思うのですが、韓国では社会的な成功こそが幸せという考え方が日本よりも強いので、いま苦しい思いを抱えているたくさんのブジョンには深い共感が得られるドラマだったのかもしれません。

このドラマを見ながらずっと「소확행」という言葉が頭に浮かんでいました。

少し前から韓国で流行っている言葉で、소소하지만 확실한 행복(ささやかだけど確かな幸せ)を略した「小確幸」という意味の言葉。
朝ごはんのパンがおいしかったとか、仕事帰りに見た夕日が綺麗だったとか、そういったなんでもないことに感じる小さい幸せことを言います。

ここ2,3年の韓国ドラマを見ていると幸せの価値観についての変化を感じることが多いですが、今作もそのうちのひとつだったと思います。

あ、ちょっと
なんかまじめに語ってしまってアレなので
セクシーガンジェの画像でもみて頂いて( ◜ᴗ◝ )

出典:JTBC






それぞれの地獄

ここからはガンジェとブジョン以外の人物のことについて、少し書いて終わりにしたいと思います。

このドラマ、人生に迷ったブジョンとガンジェが地獄を生きるなか、周囲の人間が単なる加害者でないのが、すごく良い。

それぞれが、それぞれの地獄を賢明に生きている激重ヒューマンドラマ。

優しくて正直者だけど何もわかってない夫のジョンス、過剰に夫婦のことに口を出してくる義母、何年も夫を看取り続けているジョンスの初恋の相手ジョンウン、盗作女優のチョン・アランでさえ苦悩のなか生きている。

あ、DV夫のジンソプ先生をのぞいて。

ジンソプくんは1回地獄行ってこよか。


出典:JTBC

例えば、ブジョンの義母はとんでもない嫌な姑ではあるけれど、義母には義母の苦悩があって。

自分は夫の家族に尽くして尽くした末に逃げ出したけれど、苦労して育てた息子が結婚し、いざ自分が尽くされる側になった時には時代は変わって大切にしてもらえない。家のことは嫁がするという考えが根本にあるので、連絡の取れないブジョンに苛立ちがつのるし、そもそも婚家ではなくそれぞれが自分の親に良くするという考え自体が理解できない。

直情的な人物ではあるけれど、ブジョン父への態度とか見ても決して悪人ではなく、ただそれぞれが置かれた立場がちがうだけ。しかし立場がちがうと誰かにとっての悪人になってしまうのが人生。あぁ、人生。

優しいけれどバカ正直な夫はブジョンの心の拠り所にはなれなかったけど、ギョンウンにとっては夫の看取りという辛い現実から救ってくれる存在、ブジョンにとってのガンジェだったわけで。


出典:JTBC

ブジョンが夫へむけた言葉「私もあなたのために自分を犠牲にできる。でも好きになることはできない。」があまりに夫婦についての至言すぎて、自分の結婚生活振り返っちゃったわ。

ブジョンとギョンス夫婦、ジョンウンと病気の夫、タギの姉とバツイチのパートナー、それぞれの夫婦を通して「ひとりの人と一生一緒にいることの難しさ」を見せてきて、これは同時にブジョンとガンジェでさえ一生一緒にいることは簡単ではないということでして。

あのプラネタリウムで再会したあとのふたりがどうなっていくのか、これまた余韻が良い…

下のふたつのシーンの構図がほぼ同じなのきつくないですか…
まったく別の種類の緊張感( ◜ᴗ◝ )

出典:JTBC

ブジョン夫を演じたパク・ビョンウンさんの演技がとっても良かった。
すごい難しい役だったのに。

あと、ガンジェの側にあんたたちがいてくれて本当に良かった!なこのふたり。


出典:JTBC

文学的な部分、特にふたりの心の独白はむずかしくて何言ってるかわかんないなってとこ多かったけど(馬鹿)それでも感じたものはずっと心に残しておきたいなと思う、そんな素敵なドラマでした。

最後まで読んでいただきありがとうございました🍙