生きている私たちみんな幸せであれ!
出典:tvN
作品情報
原題 우리들의 블루스(私たちのブルース)
2022.4.9~2022.6.12
tvN
演出・脚本
演出:キム・ギュテ、キム・ヤンヒ、イ・ジョンムク
脚本:ノ・ヒギョン『その冬、風が吹く』『大丈夫、愛だ』『ディア・マイ・フレンズ』『ライブ〜君こそが生きる理由〜』『世界で最も美しい別れ』
キャスト
イ・ビョンホン、シン・ミナ、チャ・スンウォン、イ・ジョンウン、ハン・ジミン、キム・ウビン、 パク・ジファン、 チェ・ヨンジュン、ペ・ヒョンソン、オム・ジョンファ
あらすじ
恋は甘く切なく、人生は楽あれば苦あり。いつもにぎやかな済州島を舞台に、この島で生きる人たちが織りなすさまざまな物語をオムニバス形式で描く。
Netflixより引用
私の認識では「私たちのブルース」はヒューマンドラマであって、ロマンスではないと思うのですが
Netflix Japanの「チェジュで忙しく暮らしている人々の甘酸っぱく時にはほろ苦く紆余曲折なロマンスの物語」という説明文は疑問に思いました。ロマンス要素がゼロだとは言いませんが、それがドラマの主旨ではないと思います。
感想①(ネタバレなし)
済州島を舞台に、島で生きる人々の人生を苦くも温かく描いたヒューマンドラマ。
・韓国の名優たちをかき集めたような豪華キャスト
・数々の名作を生みだしてきたノ・ヒギョン作家の脚本
・キム・ウビンの復活作
など、放送前から期待感と注目度の高い作品でした。
個人的な感想としては、事前の期待が大きすぎたこともあり、どちらかと言えばちょっと苦手…妙に後味の悪さが残る作品となりました。
ただ、この後味の苦さこそが”ブルース”なのだと思うと、私の感情は制作サイドの狙い通りの反応な気もします。悔しいけど(笑)
前半はネタバレなしの感想を、後半はストーリーの内容に触れた感想を書いていますので、よろしければお付き合いください。
好き度🍙★★★☆☆
豪華名優たちの集結
今作の見どころは、なんといっても韓国を代表するような豪華な俳優さんたちが一堂に会したこと!発表されたメインビジュアル見た時の衝撃よ!!
出典:tvN
この写真1枚でいろいろ言いたいことがあふれて止まらないですよッ
ドラマはオムニバス形式で構成されていて、毎話それぞれの島民にフォーカスして物語が進みますが、それぞれが完全に独立した物語ではなく、登場人物たちが微妙に交差しながら進みます。
誰かの物語では脇役でしかなかった人も、その人の物語では自分が主役。
社会の中では多数のうちのひとりにすぎないが、それぞれの人生の主役は自分であるといった意味合いが感じられ、ドラマの主題にもあっていてとても良い構成だと思いました。
■ ハンスとウニ(1~3話)■
イ・ジョンウン演じるウニと、チャ・スンウォン演じるハンスの物語。
ポスターから感じられるような、ほのぼのした雰囲気の物語ではありませんのでご注意ください。
(ゾンビも怪物も全然OKな私ですが、この手のタイプの物語がとても苦手。ハラハラして怖くて見ていられなかったです。見たけど。)
海産品の商売で成功し済州島の経済をひっぱっているウニは、働き盛りで仕事ができ、島民を代表する存在。
ドラマの構成的にも、オムニバス形式で各話がバラバラにほどけないよう1本のドラマとして成立するための接着剤であり、緩衝材であり、中和剤のような存在です。
■ ヨンオクとジョンジュン(4、11話)■
ハン・ジミン演じる海女のヨンオクと、キム・ウビン演じる船長ジョンジュンの物語。
明るく自由奔放だが秘密を隠し持っている海女ヨンオクに惹かれるジョンジュン。ハン・ジミンは本当にどんな役でも上手に演じるな~とあらためて感じました。そしてかわいい。
今作で復帰したキム・ウビンについては言いたいことが多すぎるので、下記で改めて書きます。
■ ヨンジュとヒョン(5話)■
島の全員が自分を知っているこの場所からはやく逃げたいと考えているヨンジュ(ノ・ユンソ)とヨンジョの幼なじみヒョン(ペ・ヒョンソン)の物語。
ふたりの父親、イングォンとホシクは過去の出来事からお互いにいがみ合っている。
出典:tvN
ヨンジュン役のノ・ユンソが今作がはじめての演技と言うのが驚き。
素敵な人材を次から次に見つけてくるからすごいわ、韓国エンタメ界。
■ドンソクとソナ(6、9、10、11話)■
島での行商で生計をたてているドンソク(イ・ビョンホン)と心に病を抱えるソナ(シン・ミナ)の物語。
■ イングォンとホシク(7、8話)■
ヨンジュとヒョンの父親、イングォン(パク・ジファン)とホシク(チェ・ヨンジュン)の物語。(そしてヨンジュンとヒョンと家族たちの物語でもある)
■ ミランとウニ(12、13話)■
島のアイドル的存在ミラン(オム・ジョンファ)とウニの20年来の友情の物語。
■ ヨンオクとジョンジュンそして…(14,15話)■
ヨンオクとジョンジュン、そしてヨンオクが隠してきた秘密の物語。
出典:tvN
■ チュニとウンギ(16,17話)■
島のベテラン海女チュニ(コ・ドゥシム)とチュニの孫ウンギ(キ・ソユ)の物語。
出典:tvN
■ オクドンとドンソク(18,19,20話)■
長年にわたる確執を抱えたドンソクとドンソク母オクドン(キム・ヘジャ)の物語。
ノ・ヒギョン作家の脚本
ノ・ヒギョン作家の描く物語は、人生のしょっぱい部分を巧みに描いて登場人物たちに共感させ、視聴者が自分の人生を振り返り応援したくなるような作品が多いです。「大丈夫、愛だ」「ライブ」など、私の大好きな作品もそのうちのひとつ。
「人生は思い通りにならないことの連続。しかしそれが人生だ」
そんなメッセージは今作も同じ。
人生賛歌であり、応援歌であり、まさにブルース。
なんだけど
「私たちのブルース」はこれまで見たノ・ヒギョン作品の中で、いちばん苦手な作品となりました。
「そのエピソードいる?」「その一言よけいじゃない?」と感じる部分が毎話もれなくあり、また、物語を最終的に良い話に収めようとしている雰囲気が感じられ、共感できる部分が本当に少なかったです。
若い頃に金八先生を見て心底しらけた気持ちになった時の感情を思い出しました。(金八先生ファンの方、ごめんなさい)
海街を舞台としたのほのぼのした温かい物語というよりは、済州島という閉塞した土地で田舎のいやな部分を煮出したような空気感。
パンツの枚数さえ知り尽くしているような濃密すぎる人間関係。おせっかいも愛情。色濃く残った儒教文化で、年配者は無条件で崇め奉らなければいけない。
学生時代に法事で訪れた父の田舎で、顔しか知らない親戚のおじさんに制服のスカートの丈がどうとか髪型がどうとか、彼氏はいるのかとか、女の子なら台所仕事手伝ってこいとか言われた時のうんざりした感覚に似た感情を思い出しました。
「人生は思い通りにならないことの連続。しかしそれが人生だ」
なるほど。
これはある意味、ブルースだ。
ブルースっていうよりも演歌のほうが近い気がするけど。
なんだかなぁ~
もやぁぁぁァァァアアアアアア~~としたものを感じながらも結局最後まで(号泣しながら)見ました。
泣いたんかい。
物語から一歩ひいた目線で見ようと思っていたのですが、それを許さない俳優さんたちの圧倒的な演技力がね。半端ないっす(語彙力)
ひとりひとりがまるで本当にそこに実在している島民のようで。
特に最後のドンソクとオクドン親子の物語、イ・ビョンホンとキム・ヘジャさんの鬼気迫る演技は本当にすばらしく、最終話は初めから最後まで大号泣でした。(大号泣で見終えたあと、やっぱりこの物語は苦手だなと思ったけど)
この親子のエピソードだけで1本の映画になるような重厚感ある仕上がり。
最後まで俳優さんたちの素晴らしい演技、そして俳優陣と同じくらい豪華なOSTで魅せたドラマだったと思います。
(最後にOSTのリンクを貼っています。あまりに豪華で好きな曲ばかりなので選びきれない!!!泣く泣く選んだよ… HEIZE、10cm、ジミン(BTS)、Davichi、MeloMance、Punch…などなど、豪華すぎる!!!)
キム・ウビン復帰作(with シンミナ)
豪華な出演者が話題になる中、特に注目を集めたのが、上咽頭がんの治療に専念していたキム・ウビンが、「むやみに切なく」以来6年ぶりの復帰作品として出演したこと。
しかも、現実にお付き合いされているシン・ミナちゃんとの共演!!!!
出典:tvN
この写真2回目の登場ですが、キム・ウビンとシン・ミナちゃんの間にはさまれてうるハン・ジミンの気持ちよ(笑)
プロだからなんとも思ってないとは思うけど、完全になんとも思ってことはないと思うの。
制作発表でも、シン・ミナちゃん腕組む人まちがえてる感 やばい。
(とりあえず両端のふたり交代しよっか?)
出典:tvN
キムウビン演じるジョンジュンがね~
本当に素敵な男なのですよ。
明るくて優しくて温かくて、そのうえ誠実で。
癖アリの島民たちの中でよくこんなにまっすぐ育ったなっていう、まるで復帰をお祝いするプレゼントかのような役柄(弟もかわいい)
ジョンジュン目当てで最後まで見ていたような気もします…
いや、ジョンジュン目当てというより、キム・ウビン目当て?
相続者たちの時ほんとキムウビン苦手だったのに…船長が良い男すぎるということを差し引いても…これはもう…キムウビンに惹かれてるということを認めざるを得ない…ほんと苦手だったのに…船長ほんと良い男… pic.twitter.com/cav9MCPXPr
— おにぎり🍙삼각김밥 (@kyonbokkun0125) 2022年5月31日
劇中、イ・ビョンホンが「オレの好きな女」=シン・ミナちゃんの動画をキム・ウビンに見せるシーンや、「オレの好きな女」=シン・ミナちゃんかわいいだろ?とキム・ウビンにたずねるシーンがあり、見ていて顔がにやついて仕方なかったです。
ドラマへの没入を妨げるようなキャスティングは基本あんまり好きではないのですが、ウビン♡ミナの共演はとても嬉しかったです(もともとあんまり没入してなかったしね毒)
感想②(ネタバレあり)
ここからは各エピソードで感じたことを少し書いていきますが、「私たちのブルース」大好きだという方にはおもしろくない内容になると思いますので、ご承知おきください。
【ハンスとウニ】
チャ・スンウォンさんの中年の哀愁が暴走しすぎ(これは褒めてる)
過去のまぶしかった自分を思いながら、”なりたくない自分”にむかってすすんでいくおじさんの姿がハラハラして見ていられなかった。
最後に「おまえが楽しそうで言い出せなかった」と上から目線のハンスの台詞、美人局未遂しておきながら何を言っているのか。
最終回、なに食わぬ顔で運動会に参加している場合ではない。
子役のふたり、出演時間は短いけど印象的で私の心に爪痕残しました!
【ジョンジュンとヨンオク】
出典:tvN
ハン・ジミンとキム・ウビンのキスシーン放送されなかったのは共演したシン・ミナちゃんへの配慮ですか?(たぶんちがう)シン・ミナとイ・ビョンホンはチュっとしちゃったけど大丈夫ですか?(大丈夫です)
【ヨンジュとヒョン】
出典:tvN
ヒョンが高校やめる必要あったかな?
父親ふたりとも現役で働いてるし、おむつ代は俺が稼ぐ!ってバイトするよりストレートで大学入って就職した方が生涯収入多そう(現実的提案)
【イングォンとホシク】
本当のことがいちばん相手を傷つけるというのは真理だなと思いながらも、確執の原因が逆恨みとしか言えない過去でモヤる。ふたりの父親の過去を見るとどちらもなかなかの毒親なのに、ふたりともほんと良い子に育ったね、奇跡。
「お父さんのことずっと恥ずかしかった」ひどいこと言ってごめんなさい…泣…みたいな良い話で仕上げてるけど、暴力暴言にまみれた父親なんて恥ずかしくて当然だよなと思うなど。本当のことがいちばん相手を傷つけるという真理をここで回収してくる筋書きはお見事だけど、もやもやが残る展開。
とは言え、私も人の親なので、子どもの人生を想う気持ちは痛いほどわかってしまい泣きました(泣きへのハードルが5cm)父親ふたりの演技がほんとにすごいんだよ…これは泣くなというのが無理な話。
【ドンソクとユナ】
ドンソクとユナの物語は、最終エピソードのドンソク親子の物語にむけて、ドンソクの人生や人柄をみせるために用意された感じがして、ちょっとシン・ミナがもったいなかったような気が。
ユナの病気を表現をするのに水が指先から滴る演出が印象的。
【ミランとウニ】
どれほど親しくても人の日記は勝手に見たらダメ、絶対。
ふたりが「義理!」と腕を合わせるたびに妙にイラっとするこの感情はなんでしょう。そこにはあるのは義理だけで、友情がないからでしょうか。
お互いに心ひらいてさらけだしてこそ本当の関係が築けるという考え方は苦手です。「親しき仲にも礼儀あり」しかし、女ふたりの友情に少なからずパワーバランスがあって、その関係は年を重ねても変わらないというのがリアルで超絶ブルース。
【ヨンオクとジョンジュン、そしてヨンヒ】
このテーマをこんな風に演出するのか…といちばんモヤモヤしたエピソード。これまでひたすら隠されていたヨンオクの秘密は、ダウン症候群の双子の姉がいて、両親亡き今ヨンオクが経済的に面倒をみているということ。
このテーマを扱うこと自体は社会的に大きな意味があり、実際にダウン症を抱える画家のチョン・ウネさんがヨンヒを演じていることもとても強いメッセージになったとは思うのですが、台詞や演出の端ばしから「上から目線」なものを感じてしまい気分がすっきり萎えました。
聴覚障害者のビョリとヨンヒを(障害がある者同士だから友だち)としたり、ビョリに恋をするジョンジュン弟を障がいのある子を好きになる奇特で優しい男のように描いたり。
障害がある人を十把ひとからげに「哀れで可哀そうな存在」と見て、一段高いところから守ってあげようとするような上から目線のおごった価値観が感じられて、涙もひっこみました。(と言っても号泣しながらみたんですけどNE☆)
チョン・ウネさんが描いた島民の似顔絵とそれを見て涙するハン・ジミンの演技には感動しました。(そしてジョンジュンが良い男だった)
【チュニとウンギ】
事故によって危篤状態の夫の状態を義母に秘密にし、数日間子供を預けるという実に理解に苦しむお話。涙ながらに子供に嘘をつかせる母親…実に理解に苦しむ。
互いに気まずい孫と祖母。孫を持て余したチュニが「言うことを聞かないならお母さんに迎えに来ないでって電話するよ」と脅かすあたり、その世代の方がいかにもやりそうな子育て術でとてもリアル。眠る子を見るおばあちゃんの温かい視線は本物でそれが唯一の救いだった。
100個の月を見に行くあたりの描き方が雑でチープだったのが残念。
【オクドンとドンソク】
最後にこれを持ってくるか…というスーパーヘビー級チャンピョン。
キム・ヘジャさんとイ・ビョンホンさんの演技は素晴らしかったですが、それでも見終わったあとに残ったもやもや感は別のエピソードで感じたものと同じ。
ふたりに残された時間、オクドンの後悔、子供のように母親の愛を求めるドンソクの姿に号泣しながらも、最終的に良い話としてしめくくるにはスッキリしないものがありました。
「俺に悪いと思わないか?子供を愛したことはあったのか?」
大の大人が惨めなほど母親の愛情を言葉で示して欲しがっているのに、決して最後まで「ごめん」「愛してる」の言葉を言わないオクドン。とてもオクドンらしい選択なのですが、それは後悔の押しつけでしかなくて。
私自身が母との関係が良好でなく、ドンソクを自分に重ねて見てしまったせいもあるかと思いますが、一度でもいいから目を見て言葉にして表現してほしかった。自分のためではなく子供のためを思うなら、ドンソクが求めているものに応えてほしかった。
「俺は母を恨んでいたのではなく、仲直りしたかったんだ」
子供は親を無条件に愛している、どんなに恨んでいるように見えても心の底では親の愛情を求めているというキレイなお話にまとめられたことが残念。
積み重なった年月で乾ききったドンソクの心は、最後の数日を共に過ごしたくらいでは満たされないと思う。
でも、それがブルースなんですね。
それでも明日からも生きていかなくちゃいけない…それが人生なんですよ…
各話もれなくイライラもやもやしながらも、結局最後まで涙しながら見ました。好きなドラマだとは言えないけれど、涙が出るっていうのは、文句いいながらも心が動かされているという証なので。
私には刺さらなかったけれど、誰かにとっては感動するドラマだと思います。