韓国映画初のSF映画「スペース・スウィーパーズ」
2092年の宇宙を舞台に宇宙ゴミを回収するスウィーパーズ(清掃人たち)の物語。
韓国映画ではないような韓国映画です。
作品情報
原題 승리호(勝利号)
邦題は原題のサブタイトルの「スペース・スウィーパーズ」
136分
当初2020年8月に劇場公開予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2度公開が延期された末に、2021年2月よりNetflixで独占配信されることになった作品です。
好き度🍙★★★☆☆
ハリウッド映画のようなクオリティのCGと韓国映画らしいヒューマン要素の融合で、韓国映画ではない映画をみているような感覚でした。
チーム物のおもしろさがあり、SF映画が特に好きではないわたしでもけっこう楽しく見られました。
キャスト
ソン・ジュンギ
『トキメキ☆成均館スキャンダル』『根の深い木』『わたしのオオカミ少年』『優しい男』『太陽の末裔』『ヴィンチェンツォ』
キム・テリ
『お嬢さん』『ミスターサンシャイン』
チン・ソンギュ
『六龍が飛ぶ』『犯罪都市』『エクストリーム・ジョブ』
あらすじと感想をネタバレなしで
「スペース・スウィーパーズ(原題:승리호(勝利号)」は2092年、宇宙開発が進み一部の人類が宇宙空間に移住している世界で、宇宙ゴミを回収する宇宙船「勝利号」の乗組員たちを描いた作品です。
導入は設定を理解するのにけっこう時間がかかりました。
(私のキャパの低さゆえ)
地球が砂漠化と土壌の酸化により住めなくなり、一部の選ばれた人物のみが宇宙空間に移り住むことが許された世界で、「勝利号」メンバーの立ち位置や、宇宙開発会社UTSの思惑など、2092年の状況が理解できるまでがちょっとしんどい。
また宇宙空間の住民たちが、それぞれの言語(韓国語や英語も含めてその他の複数の言語)で話し、通訳機を介して会話をする設定なので、とびかうたくさんの言語たちに頭がごちゃごちゃになります(私のキャパの低さが)
そのあたりが少しややこしいですが、そこが整理されればストーリーはまったく難しくなく、笑いとユーモアあふれるシーンも多く総合的には見やすい映画だと思います。
SF映画らしく宇宙船でのバトルシーンにかなりの時間を割いていて、CGのクオリティがハリウッド映画なの?ってレベルなので、これが劇場公開されなかったのは本当にもったいなかった…!個人的な感覚でいえばCGのクオリティは「神と共に」よりもずっとレベル高かった!
製作費240億ウォンに対して、Netflixは310億ウォンで著作権を購入したのとのことなので、この先行き不透明なコロナ禍で、いつできるかわからない劇場公開を待つよりも、確実に製作費を回収できる選択をしたのはやむを得なかったと思います。
勝利号の乗組員は4人。
ソン・ジュンギ演じる操縦士のキム・テホ。
ある事情で、お金を必要としている。
ソン・ジュンギはインタビューでテホの人物像を「自暴自棄」という言葉で表現して「撮影当時の自分の気持ちとテホの気持ちが似ていた」と語り、離婚直後だったためスキャンダル的観点から話題になりました。
わたしには「自暴自棄」というよりも「がむしゃら」という言葉の方がテホのキャラクターに合ってるように感じました。
ソン・ジュンギ自身の「自暴自棄」については「詳しく言いたいのですが、個人史なので余白の美として残したい」と話したとか(参照)
「個人史」「余白の美」という言葉にセンスを感じる…!
チャン船長を演じるのは「アガッシ」「ミスターサンシャイン」のキム・テリ。
キム・テリの神秘的で意志の強そうな雰囲気が最強の女に合っていてかっこいい。
後半にむかってカッコ良さが加速していきます。
コワモテの元麻薬密売人、でも実は心優しい機関士のタイガー・パクを演じるのはチン・ソンギュ。
4人目のメンバーは仕事のできるロボットのバブス。
口が悪くて人間みたいなことを言う。ってかほぼ人間。
バブスの声を演じたのがなんと「タクシー運転手」「パイレーツ」のユ・ヘジン!
制作発表の写真にいるユ・ヘジンに気づいて、あれ?なんの役だったかな?と思ったらまさかの口悪ロボットの中の人っていう。
ソン・ジュンギもキム・テリも勝利号の中の人とはまったくちがうけど、チン・ソンギュなんて完全に別人だよ。俳優さんてすごい。
この4人が宇宙船「勝利号」で宇宙に散乱している古い衛星などのゴミを集めて稼いでいるわけですが、腕はいいのに仕事が粗くて稼ぎは船の修理代に消えていき、いつまでたってもお金が貯まらない貧乏暮らし。
そんなある日、テホがひとりの女の子を発見します。
その女の子は実は水素爆弾を内蔵した大量破壊兵器「ドロシー」であることがわかり、勝利号の乗組員たちはドロシーを使ってひと稼ぎしようと乗り出すという展開です。
このドロシー,韓国名コンニムがめちゃくちゃかわいい。
パク・イェリンちゃんという子役の女の子。
この子の存在が勝利号の乗組員たちの心情を変化させていくんですが、コンニムと乗組員4人それぞれの絡みが非常に良い。
特にロボットのバブスとの関係が笑えてほっこりして、すごい良かった。
ラピュタの時代からロボットと少女の交流がエモいのは鉄板なんだから、あどけない少女(型ロボット)とロボットの交流、エモくないわけない。
コンニムをかわいらしく魅力的に描くことで、乗組員たちへ感情移入させることにも成功させていて、壮大なSF物語になのにきちんと人間を描けていたのも好感でした。
まあ細かいところでいうと、いろいろつっこみどころもあり。
悪役の描き方が得意な韓国作品なのに、悪役の描き方が雑すぎる。
外国人俳優さんたち、特にエキストラ的な役者さんたちの演技がぎこちなさすぎて気になってしょうがない。
特に、おいおいおいおいとつっこみを入れずにおれなかったのは、ナノボットという物語にけっこう重要な展開を与える物質の性質がかなりご都合主義で「え、そんなんできるんですか?」と私の中の内場勝則さんが大暴れでした。
と、まあ、つっこみポイントもありつつ。
大絶賛の100点満点の映画とまではいかないけれど、韓国初のSF映画としてはレベル高いと思います。