2018年、非地上波チャンネル歴代最高視聴率を塗り替えた大人気ドラマ
百想芸術大賞4部門受賞
タイミングを逃して未視聴だったのですが、いざ見てみると評判どおりのおもしろさ!
サスペンス要素もある、風刺のきいたブラックコメディです。
出典:JTBC
作品情報
原題 SKY캐슬(SKYキャッスル)
2018.11.23~2019.2.1
JTBC
演出・脚本
演出:チョ・ヒョンタク
『魔女宝鑑~ホジュン、若き日の恋~』『イニョプの道』
脚本:ユ・ヒョンミ
『ゴールデンクロス~愛と欲望の帝国~』『楽しい我が家』
キャスト
ヨム・ジョンア / ハン・ソジン役
『魔女宝鑑~ホジュン、若き日の恋~』『「ロイヤルファミリー』
イ・テラン / イ・スイム役
『女を泣かせて』『王(ワン)家の家族たち』
キム・ソヒョン / キム・ジュヨン役
『偉大な誘惑者』『ラスト・チャンス!~愛と勝利のアッセンブリー~』
ユン・セア / ノ・スンヘ役
『ただ愛する仲』『イヴの愛』
オ・ナラ / チン・ジニ役
『マイ・ディア・ミスタ~私のおじさん~』
あらすじ
富・名誉・権力だけを手にする者だけが済んでいる高級住宅街”SKYキャッスル”。そこに整形外科医の夫と娘たちと暮らすソジンは、隣の邸宅に住むミョンジュの息子がソウル医大に合格したと聞き、入試関連の資料を手に入れるために手を尽くすが、ミョンジュから資料は公開しないと言われてしまう。
しかし、幸いにもVVIPの顧客だけが招待される入試コーディネーターの説明会の招待状をミョンジュから受け取ったソジン。会場を訪れると、そこにはSKYキャッスルの住人スンへの姿もあり…。
ある日、クルーズ旅行を早めに切り上げ帰国したミョンジュが、夫スチャンの猟銃で謎の自殺を遂げる。SKYキャッスルの住民たちが騒然とする中、病院を辞めたスチャンも姿を消し、もぬけの殻となった邸宅には新しい住民がやってくるのであった。
「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」ドラマ公式サイトより引用
感想
S=ソウル大学
K=高麗(コリョ)大学
Y=延世(ヨンセ)大学
韓国トップの名門大学を頭文字に掲げた高級住宅街SKYキャッスルで繰り広げられる物語。
視聴前は、子供の受験をめぐる女たちのマウントドラマだと思っていたのですが、複雑な人間関係を描きながらもサスペンス要素ありのドキドキ展開!
過度な学歴偏重社会への警鐘や「子供の人生は子供のもの」というメッセージ性もあり、とても引き込まれるドラマでした。
メッセージ性のあるドラマでも決してエンターテインメントとしての面白さを忘れないところが韓国ドラマの素敵な部分のひとつですね!
また配役のバランスの良さと演者さんたちの神がかった演技が素晴らしい!
子役も含めて韓国の俳優さんの演技力の高さをあらためて感じました。
それでは、相関図と合わせて感想を書いていきたいと思います。
これ以降、ネタバレがありますのでご注意ください。
好き度🍙★★★★☆
相関図と登場人物
ストーリーの中心となるのはハン・ソジン一家ですが、中心となる4人の女性それぞれの価値観や人間関係を丁寧に描いているので、どの人物に感情移入するか見ている人によって感じ方が変わるドラマになっています。
受験のためならなんでもする女
ハン・ソジン(演:ヨム・ジョンア)
出典:JTBC
出自も経歴も容姿も完璧な母親ハン・ソジン。
3代続けて医師の家門を作り上げて義母に認められることが人生最大の目標。娘をソウル医大に合格させるためには手段をいとわない物語の中心人物。
しかし実は必死で隠し続けてきた”クァク・ミヒャン”という過去があった…
受験のためなら魂をもさしだすような狂気と、たまに心を取り戻して人間に戻る行ったり来たりするヨム・ジョンアさんの演技がすばらしい!
「アガリモリ#%〇※△%☆#※…!!!!!」
悪態をつくときの、いかにも育ちの悪そうな”正体をあらわした”表情がたまりません!言葉はわからなくても、めちゃくちゃ汚い言葉なのが伝わってくる!
この悪態の日本語字幕が「口を引き裂くわよ」と若干優しいのが気になっていましたが、別の方の訳では「うっせえんだよ、クソ女」となっていたので、ぜひそちらを採用してほしいところ。
出典:JTBC
整形外科教授である夫のカン・ジュンサン役はチョン・ジュノが演じています。
男女ともに個性が強めな配役の中、チョン・ジュノだけが少し浮いている感じがしたのですが、最後まで見てみると「親に言われるがままに医師を目指しそして出世へとひた走ってきた子供の末路」を演じるのにぴったりだったと思います。
「50にもなってどうしていいのかわからない」「母さんがそんな息子にしたんだ」と人目もはばからず叫ぶ姿には、制作陣からの強い強いメッセージを感じました。
ただ…男たちの医局での権力争いがものすごい茶番で。
10年くらい前の韓国ドラマのお笑いパートを見ている気分でした…
そこだけなんとかしてくれたらもっと見やすかった…
出典:JTBC
ソジンの娘イェソ役のキム・ヘユン。
優秀で努力家だけど、自己中心的な性格で回りから嫌われている。
キム・ヘユンの演技が神がかっていてすばらしかった!
観た人誰もがイェソを嫌いになる序盤。
礼儀知らずのいやな女子高生を完璧に演じていて、討論会でハスキーな声で独演する姿には後ろから頭はたいてやりたくなるほどイラつきました!
(そういう感情をドラマにハマってるといいます)
出典:JTBC
入試コーディネータに傾倒していく様子や、感情を爆発させたり精神が不安定になっていく危うい様を繊細に演じていて、演技がほんとにすばらしかった!
後半にむかって「この子、新興宗教に没頭してしまう危ういタイプだわ」と不要な心配をしつつ。
「おまえ、人間の心をまだ持っていたんだな」というラストは非常に良かった。
ただ、急に改心して”いい子”になるのがいかにもドラマという感じで、もっとイェソのむかつく魅力を残してくれても良かったかも。
正義感の強い女
イ・スイム(演:イ・テラン)
出典:JTBC
素朴で気さく、子どもの自主性を尊重する良識的な母親。
児童養護施設を運営していた両親に育てられ思いやりがある。
とても「良い人」なんだけど、なぜか最初から最後まで好きになれなかった…
クァク・ミヒャンであったソジンの過去を「私はあなたとはちがうんだからそんなこと言ったりしない」と言いながら「あまりに興奮してしまって口をすべらせちゃった」「そんなつもりなかった」とか。
むしろわざとバラした方が潔くてすきだった…
読書討論会の解散のさせ方やどうしても本を書くと主張したり。
家出した子供を救出して、集団万引きを発見して。
イ・スイム夫妻がこの物語の「良心」の役割とストーリーを展開させる役割を同時に担っているためだとは思いますが、スイムの言動がおせっかいで自分の考えを他人に押し付けているように見えてしまい。
また、正面突破で面と向かって苦言を呈すスイムのやり方が苦手で、例えそれが良識的な意見であっても感覚的に好きになれなかったです。
出典:JTBC
夫のファン・チヨン、息子のファン・ウジュも謙虚で人望厚く「良い人」。
とっても良い人なんだけど、友達になったらなんだか疲れそう。
信念のない女
チン・ジニ (演:オ・ナラ)
出典:JTBC
いちばんお友達になりたいのはこの方(^^)/
オ・ナラ演じるチン・ジニ。
夢だった芸能界をあきらめて、結婚相談所を通じて知り合った医師のウ・ヤンウと結婚。感情に正直で、かわいらしい性格。
腹にイチモツあるSKYキャッスルの住民の中で唯一の正直者。
出典:JTBC
夫のウ・ヤンウはイェソの父カン・ジュンサンの腰ぎんちゃくで、平和主義者の楽天家。長い物には巻かれるタイプ。
いちばん幸せに生きられるタイプの男(笑)
それぞれの家庭内の人間関係が描かれる中、ここの夫婦は中年になっても仲良しのただのラブラブ夫婦です。
自分はソウル医大を出ていても勉強嫌いな息子には勉強を強要せず、「ピラミッドの真ん中あたりがいちばん幸せ」だという夫、この人とも友達になれそう。
抑圧されがちな女
ノ・スンヘ (演:ユン・セア)
出典:JTBC
ユン・セアさんが大好きというのもありますが。
この家族が最高に好きでした!!!
スンへの夫への反撃が最高!
この家族の関係再構築の流れが最高!
5人家族のケミが最高!
風刺のきいたブラックコメディーで、この家族のスピンオフドラマ制作希望です!!
大学院で博士号まで取得したイ・スンへは威圧的な父から逃れるために夫と結婚、夫でロースクール教授のチャ・ミニョクは出世のために妻と結婚。
長女と双子の息子に恵まれ、スンへも他の母親たちと同じように子供が名門大学に進学することを希望しているが、利己的で学歴のみが人間のすべてであると考える夫の教育方針に苦しんでいる。
出典:JTBC
夫チャ・ミニョク役のキム・ビョンチョルさんの演技が完全ホラーで怖すぎるんですが、その怖さが徐々にコメディーに変わっていくところが見どころ!
↑ ↑ ↑
この眼光鋭いまなざしが
こうなるからたまらん
↓ ↓ ↓
出典:JTBC
威圧的な家長を前に立ちあがるイ・スンへと子供たちを熱く応援!
覚悟の訴えがちっともミニョクの心に届かず絶望…
それでも訴え続けるスンへと子供たちを熱く応援!
「壁にむかって話しているようだ」と言ってるミニョクに「おまえがだよ」と全力つっこみ…
双子たちを演じるのは若手のホープふたり。
気の優しい兄にはキム・ドンヒ(「梨泰院クラス」「人間レッスン」)父親に反発する弟にチョ・ビョンギュ(「驚異的な噂(悪霊狩猟団カウンターズ)」「ストーブリーグ」)
今となっては豪華な組み合わせです!
出典:JTBC
実は私にも息子がふたりおりまして。
スンへと双子の関係がとっても素敵で、うちの子たちもあんなイケメンにならんかな~と妄想が広がりました(そもそも私がユン・セアではないので不可能)
雪が降る夜に「エルサ姫が魔法をかけたのかな」とか言っちゃうイケメンの息子を、もうひとりのイケメン息子と一緒にからかう未来が私にもやってきますように…!
ごはん食べているところに迎えに行ったら「オンマがきたって!」と喜んで店を飛び出してくるようなかわいい高校生に育ちますように…!!!
ハーバード大学に通う長女役のパク・ユナもとっても素晴らしい演技で、この家族の闘いを見届けられて幸せでした…
謎の多い女
キム・ジュヨン(演:キム・ソヒョン)
出典:JTBC
担当生徒の志望校合格率は100%の入試コーディネーター。
受けもつ生徒は年に二人までと決まっている。
もったいなかったのはこの天海祐希…ではなくて、キム・ジュヨン先生。
敵か味方かわからない時は謎の多い雰囲気で良いのだけど。
明らかに悪者だと確定していくラストにかけて、もっと丁寧にキム・ジュヨン先生の過去や凶行に走っていく心情を深く理解できる描写があればおもしろかったのに。
唇をゆがめて笑うキム・ジュヨン先生はかなり不気味でした…
名場面3選
たくさんの名場面の中から、特に好きなシーンを3つ選んでみました。
読書討論会解散投票
新しくSKYキャッスルに越してきたイ・スイムが読書討論会に参加。
ミニョクの高圧的で偏った押し付けを「完全にコメディー」と一刀両断。
味方多数と読んだミニョクが、討論会の行く末を投票で決定しようとするシーン。
出典:JTBC
心の攻防戦がおもしろく、どっちつかずで味方にも的にもなりえるチン・ジニ夫婦や、参加したことがないのにも関わらず投票日のみあらわれるカン・ジュンサンなど人間模様が見られておもしろい。
ミニョク完全なる支配者の座から引きずり降ろされる最初の一歩で、見ていて気持ちのいいサイダーシーン。
大人の喧嘩
キム・ヘナ事件早期解決のために集まった住民たちが、罪をなすりつけあって子供の喧嘩をはじめるシーン。
出典:JTBC
0.1%の富裕層だけが住めるSKYキャッスル。
上品で優雅な知識人たちのあいだで始まるテンポの良い悪態と下品な言葉の応酬。
もう腹を抱えて笑いました。
なんだこれ、って。
学歴だけがすべてのミニョクが、娘を学歴詐称とディスられ「うちの子はクラブで経営戦略やあれやこれややっていて、充実な毎日を過ごしているんだ!」と大声をだす場面では、笑いながらもジーンとするものがあり、そんな夫を見つめるユン・セアの超感動したという表情にまた笑ってしまいます。
我を失った大人たちが
こうなって
出典:JTBC
こうなって
出典:JTBC
こうなって
出典:JTBC
こうなる
出典:JTBC
事件後の深刻な展開の中にこのシーンをぶちこむ脚本、大好き!
支えてくれる母親
マフィアゲームの最中に喧嘩になったキム・ヘナとチャ・セリが転落事故直前のベランダで仲直りするシーン。
セリがヘナに言った「親を自慢だと思えるのがうらやましい。亡くなってもなおあなたを支えてくれるっていうこと」という台詞。


母親がなくなり父親も家もなく復讐心に燃えるヘナだけど、SKYキャッスルの子どもたちがもっていなものがあるという温かさと、父親に理解して尊重してもらいたいというセリの悲しさが入り混じって、短いながらもとても印象に残っているシーンです。
キム・ヘナ役のキム・ボラの演技もすごい…!
韓国社会における「成功」とは
10年ほど前から韓国ドラマを見てきて頻繁に感じてきたこと。
ドラマ内で当然のように描かれている「社会的に認められる存在にならなければ幸せになれない」という価値観に対する違和感。
その違和感の正体をとてもわかりやすく描いている稲川右樹先生の対談記事(Netflix)があるので共有します。
韓国で描かれる「成功した人生」って、ある意味シンプルですよね。日本だったら、例えば寿司屋に弟子入りして職人として一人前になったら、「有名になれなくても、自分の満足のいく寿司を作り続ける」という人生の幸せがあり得るんですけど、韓国はそういう生き方がしにくい。
韓国の場合は自己満足ではいつまでも貧しく、誰かに認められないと意味がない。認めてもらうためには人脈が必要だし、人脈を得るためにはソウルのような良いコミュニティに行かなくてはいけない。自分が幸せならいい、という価値観がなかなか周囲に理解されないんですよね。非常に大変な社会だと思います。
引用:韓国ドラマに見る、受験戦争に翻弄される大人たち(後編)|Netflix | ネットフリックス|note
OST
このレビューを書きながら延々聞いていましたが、中毒性がすごい
We All Lie(하진)
youtu.be
★は4つにしました。
子供を愛しているからこそ期待してしまう。
でもそれは絶対に親のためであってはいけないよな…と自分の日ごろの言動を振り返ったドラマでした。